会長挨拶

風は南から 九州から変えていきませんか

九州教育経営学会 会長 元兼正浩(九州大学大学院教授)

 このたび半世紀近い伝統のある九州教育経営学会の第6代会長を拝命することになりました九州大学の元兼正浩(教育法制)です。初代会長である高野桂一教授の前任者にあたる原俊之教授(のちNHK経営委員長)の時代から九州大学では学校経営学のポストが教育方法学の講座に置かれており、教育方法学と学校経営学が両輪となるような教育経営学を構成してきたことが本学会のベースとなっています。近年のカリキュラムマネジメント(教育課程経営論)をリードする人材が九州大学、そして本学会から多く輩出されていることからも伺えるように、授業づくり、カリキュラムづくり、学校づくりをベースに展開する地域に根差した教育経営研究を大学研究者、教育行政機関、教育現場の実践家という三位一体の研究集団として推進することが学会創設の初期の目的であり、その所期の目的が達成されるよう、本学会を蘇生・再生させていくことが私に与えられた使命の第一だと受け止めています。

 同時に高野教授は機能主義的な一般経営学でなく法社会学的アプローチによって教育経営・学校経営の科学と哲学を探求されていたことも忘れてはならない継承課題と受け止めています。学会創設前の頃、教育界を席捲していた学校経営の近代化(合理化)論に対し、民主化の重要性を唱え、教育経営の近代化-現代化論争を提起された慧眼は、働き方改革が喫緊の課題として求められ、教職志望者や免許保有者が減少している教育現場の状況にとって重要な視点となります。教育法や教育行政学の視点から教育経営学に接近することは、こうした現状を少しでも変えていける原動力になると考えます。現状に諦めてしまうのではなく、ペン(学問)でもこの社会は変えられるという気概をもって意識変革に挑戦していくことが第二の使命だと考えています。

 学会が何のために必要か、その存在意義を示すのは私たち自身です。J.F.ケネディや松下幸之助の言葉を援用する(もじる)なら、「学会が皆さんのために何ができるか」ではなく、学会という「社会の公器」である組織を使って、個人ではなかなかできないアイディアや夢をともに具現化し、この教育界を少しでも盛り上げ、よりよい方向へと変えていけたらと願います。まずは九州から一緒に変えていきませんか。